私は長い間、「自分はリーダーに向いていない」と思っていました。
人の感情に敏感で、周囲の空気を読みすぎる。相手の表情や言葉の変化が気になり、気づけば自分よりも周りを優先してしまう。
いわゆるHSP気質を持つ私にとって、リーダーという役割はどこか遠い存在でした。
「人を引っ張るタイプではないし、大勢の前で強く意見を言うのも得意ではない。」
そんな私が、ある日チームリーダーを任されることになりました。
正直なところ、不安しかありませんでした。
実際にリーダーを経験してみると、思っていた以上に苦労の連続でした。チームメンバーそれぞれが異なる方向を向き、思うように組織をまとめられず、何度も自信を失いました。
しかし、その経験を通じて気づいたことがあります。
それは、HSPだからリーダーに向いていないのではなく、「リーダーのやり方」が人によって違うということです。
むしろ、観察力や共感力、問題の兆候に気づく力など、HSPだからこそ活かせる強みもたくさんありました。
この記事では、HSP気質を持つ私が実際にチームリーダーを経験してわかった5つのことをお伝えします。
もし今、
「自分はリーダーに向いていないかもしれない」
と悩んでいる方がいたら、少しでも参考になれば嬉しいです。
HSPの私がリーダーになった経緯
私はもともと、人を引っ張るタイプではありません。
むしろ目立つことは苦手ですし、自分が前に出るよりも、周りをサポートする方が性に合っていると感じていました。
そんな私が、ある日デジタルマーケティング課のリーダーを任されることになりました。
最初は「自分にできるだろうか」という不安ばかりでしたが、それ以上に苦労したのはチームの構成でした。
チームには、
- デザインがやりたくて入社した人
- Web制作がやりたくて入社した人
- デジタルマーケティングがやりたくて入社した人
が所属していました。
一見すると全員がWebに関わる仕事なので問題ないように見えます。しかし実際は、それぞれが目指している方向や価値観が大きく異なっていました。
デザインを追求したい人。
制作スキルを高めたい人。
マーケティングで成果を出したい人。
それぞれに正解があり、どれも間違いではありません。
しかしリーダーとして組織をまとめようとすると、全員が違う方向を向いている状態ではなかなか前に進めませんでした。
当時の私は、「リーダーなのだから、みんなをまとめなければいけない」
と思い込んでいました。
ですが、今振り返ると無理もありません。
野球選手とサッカー選手とバスケットボール選手を同じチームにして、
「みんなで優勝を目指そう!」
と言われているようなものだったからです。
もちろん共通する部分はあります。
しかし目指すものが違えば、考え方も評価基準も変わります。
その結果、私は全員の期待に応えようとして疲弊していきました。
HSP気質の私は、一人ひとりの悩みや感情を敏感に感じ取ってしまいます。
だからこそ、誰かが困っていれば助けたくなるし、不満を抱えていれば解決したくなる。
気づけば自分一人で抱え込むようになっていました。
そんな経験を通じて学んだことがあります。
それは、強い組織は人数を増やせばできるわけではないということです。
まずは少人数でも良い。
信頼関係を築き、価値観を共有し、一緒に成果を出す。
そして少しずつ仲間を増やしていく。
もし今の私がもう一度チームを作るなら、最初は2人から始めると思います。
一人ずつ信頼関係を築きながら、同じ方向を向ける仲間を増やしていく。
その方がHSPの私には合っていましたし、結果として強い組織になると感じています。
学び① 人をよく見る力は武器にも弱みにもなる
HSPの特徴としてよく挙げられるのが、周囲の変化に敏感なことです。
私は昔、この性質を弱みだと思っていました。
人の顔色が気になる。
相手の機嫌に影響を受ける。
空気を読みすぎて疲れてしまう。
そんな経験が何度もあったからです。
しかし、リーダーを経験して考え方が変わりました。
なぜなら、人をよく見る力はチーム運営において大きな武器になると気づいたからです。
例えば、
「最近元気がないな」
「いつもより発言が少ないな」
「この仕事は楽しそうだけど、こちらの仕事は苦手そうだな」
といった小さな変化に気づくことがありました。
実際に仕事をしていると、人によって得意なことも苦手なことも違います。
人と話すことが得意な人。
細かい作業が得意な人。
分析が得意な人。
デザインが得意な人。
だからこそ、一人ひとりをよく観察し、その人が活躍できる役割を考えることはリーダーにとって大切な仕事だと思います。
一方で、この力には落とし穴もありました。
私は人の変化に気づくたびに、「何とかしてあげたい」と思ってしまったのです。
困っている人がいれば助ける。
仕事が進んでいない人がいればフォローする。
悩んでいる人がいれば話を聞く。
最初はそれで良いと思っていました。
しかし気づけば、自分が抱えるべきではない問題まで背負うようになっていました。
本来は本人が向き合うべき課題まで、自分の責任のように感じてしまっていたのです。
HSPは共感力が高い反面、相手との境界線が曖昧になりやすい傾向があります。
私もまさにその状態でした。
人を見る力は間違いなく強みです。
しかし、その強みを使う相手や範囲を間違えると、自分自身を苦しめる原因にもなります。
リーダーを経験して学んだのは、相手を理解することと、相手の人生や仕事を背負うことは違うということでした。
人を見る力は武器になる。
でも、自分を守る境界線も同じくらい大切だったのです。
学び② 自分に合わないリーダーシップは長続きしない
リーダーというと、
「先頭に立ってみんなを引っ張る人」
をイメージする方が多いかもしれません。
私もリーダーになった当初は、そのような姿を目指していました。
方向性を示す。
指示を出す。
チームをまとめる。
リーダーなのだから、それが当たり前だと思っていたのです。
しかし実際は、とても苦しいものでした。
なぜなら、私はもともと人を強く引っ張るタイプではなかったからです。
本来の私は、
「どうすれば仕事がしやすくなるだろう」
「どうすれば成長しやすくなるだろう」
と考える方が得意です。
人を動かすよりも、環境を整える方が自然でした。
しかし当時のチームは違いました。
それぞれが異なる方向を向いており、受け身なメンバーも少なくありませんでした。
誰かが方向性を示さなければ前に進まない。
誰かが決めなければ物事が進まない。
そんな状況だったため、私は自分に合わないと感じながらも、先頭に立って引っ張る役割を担っていました。
もちろん、必要な場面もありました。
リーダーとして決断しなければならないこともあります。
しかし、自分の本来の強みとは違うやり方を続けるのは想像以上にエネルギーを使います。
気づけば私は、メンバーの悩みを聞き、業務のフォローを行い、方向性を決め、問題が起きれば解決し、
すべてを自分で抱え込むようになっていました。
今振り返ると、私はチームを育てる前に、自分一人で組織を支えようとしていたのだと思います。
その経験から学んだことがあります。
それは、自分に合わないリーダーシップを続けても長続きしないということです。
もし今の私がもう一度チームを作るなら、最初から大人数をまとめようとは思いません。
まずは2人。
一人ずつ信頼関係を築きながら、考え方や価値観を共有する。
一緒に成果を出し、その人が次の仲間を支えられるようになる。
そして少しずつ組織を大きくしていく。
そんな形を選ぶと思います。
強い組織は人数の多さで生まれるわけではありません。
信頼関係と共通の価値観の積み重ねによって作られるものです。
HSPだからリーダーに向いていないのではありません。
大切なのは、自分に合ったリーダーシップの形を見つけること。
私はリーダーを経験して、そのことを学びました。
学び③ 全員に応えようとすると自分が壊れる
リーダーになった当時の私は、全員に応えようとしていました。
メンバーから相談されたら力になりたい。
困っている人がいたら助けたい。
不満を抱えている人がいたら解決したい。
リーダーなのだから、それが自分の役割だと思っていたのです。
しかし、その考え方は少しずつ私自身を追い詰めていきました。
今振り返ると、私は「チームを良くしたい」という気持ちが強すぎたのだと思います。
HSPは相手の気持ちに敏感です。
だからこそ、
「あの人は納得していないかもしれない」
「もっと良いやり方があったのではないか」
「自分の伝え方が悪かったのではないか」
と考え続けてしまいます。
そして気づけば、自分がコントロールできないことまで抱え込むようになっていました。
もちろん、リーダーとして責任を持つことは大切です。
しかし、人にはそれぞれ考え方があります。
価値観も違います。
行動するかどうかも本人次第です。
どれだけ相手のことを考えても、自分一人の力で全員を変えることはできません。
それにもかかわらず、当時の私は全員に理解してもらおうとしていました。
全員に納得してもらおうとしていました。
全員に好かれようとしていました。
だから苦しかったのです。
今ならわかります。
リーダーの役割は、全員に好かれることではありません。
チームが前に進むための判断をすることです。
時には誰かに反対されることもあります。
時には厳しいことを伝えなければならないこともあります。
それでも必要な判断なら、責任を持って決める。
それがリーダーの仕事なのだと思います。
HSPの私は長い間、「嫌われたくない」という気持ちを持っていました。
しかし、リーダーを経験して学んだのは、
「全員に好かれること」と「信頼されること」は違うということです。
全員に好かれようとすると、自分が壊れてしまう。
でも誠実に向き合い続ければ、たとえ意見が違っても信頼は積み重なっていく。
これはリーダーを経験したからこそ得られた大きな学びでした。
学び④ HSPだからこそ問題の兆候に気づける
ここまで読むと、
「やっぱりHSPはリーダーに向いていないのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、リーダーを経験した今だからこそ言えることがあります。
それは、HSPだからこそ発揮できる強みも確かにあるということです。
その一つが、問題の兆候に気づく力です。
私は昔から、人の変化や周囲の空気の変化に敏感でした。
以前はそれを短所だと思っていました。
考えすぎる。
気にしすぎる。
心配しすぎる。
そう感じることも少なくありませんでした。
しかし仕事を続ける中で、その感覚に助けられた場面が何度もありました。
例えば、
「この施策はうまくいかなくなるかもしれない」
「このままではチームの雰囲気が悪くなるかもしれない」
「今は数字が出ているけれど、数か月後に影響が出そうだ」
そんな違和感を覚えることがあります。
もちろん、すべてが当たるわけではありません。
しかし、その小さな違和感を見逃さないことで、大きな問題になる前に手を打てることもありました。
マーケティングの仕事でも同じです。
数字だけを見ていると気づかない変化があります。
お客様の反応。
現場の声。
チーム内の温度感。
そうした定量データには表れない情報が、重要なヒントになることも少なくありません。
HSPは考えすぎると言われることがあります。
確かにその一面はあると思います。
しかし見方を変えれば、それは物事を深く観察しているということでもあります。
実際、私自身も多くの失敗を経験しました。
それでも振り返ると、危険な兆候や違和感に気づく力は、自分の強みだったと感じています。
大切なのは、その感覚に振り回されることではありません。
違和感を感じたら立ち止まって考える。
事実を確認する。
そして必要な行動につなげる。
そうすることで、HSPの感受性は不安の原因ではなく、組織やチームを支える力になります。
私はリーダーを経験して、HSPの特性は弱みではなく、使い方次第で大きな強みになることを学びました。
HSPだからリーダーに向いていないは誤解だった
リーダーになる前の私は、
「自分はリーダーに向いていない」
と思っていました。
人の顔色が気になる。
空気を読みすぎる。
人の悩みを自分のことのように考えてしまう。
そんな自分が組織をまとめる姿を想像できなかったからです。
実際にリーダーを経験してみると、想像以上に大変でした。
チームがまとまらないこともありました。
人の問題を背負いすぎて苦しくなったこともありました。
自分に合わないリーダーシップを演じて疲弊したこともあります。
正直に言えば、
「やっぱり向いていないのかもしれない」
と思ったことも一度や二度ではありません。
それでも、今振り返ると学んだことがあります。
それは、HSPだからリーダーに向いていないのではなく、自分に合わないリーダー像を目指していただけだったということです。
世の中では、
強い言葉で引っ張る人。
カリスマ性で人を動かす人。
決断力で組織を率いる人。
そんなリーダーが注目されることが多いかもしれません。
もちろん、それも素晴らしいリーダーシップです。
しかし、それだけが正解ではありません。
人の変化に気づく人。
相手の強みを見つける人。
安心して働ける環境を作る人。
信頼関係を大切にする人。
そんなリーダーがいても良いはずです。
そして私は、こちらのタイプでした。
もし今、
「自分はリーダーに向いていないかもしれない」
と悩んでいる方がいるなら、無理に誰かの真似をする必要はありません。
大切なのは、自分の強みを理解し、自分らしいリーダーシップを見つけることです。
私自身、まだ理想のリーダーになれたとは思っていません。
今でも悩むことはありますし、失敗することもあります。
それでも一つだけ確信していることがあります。
HSPだからこそできるリーダーシップは確かに存在するということです。
もしこの記事が、かつての私と同じように悩んでいる誰かの背中を少しでも押せたなら、とても嬉しく思います。


