「年収を上げるなら、管理職を目指すべきなのか?」
以前の私は、どこかでそう考えていました。
実際に現職では管理職を経験しましたが、チーム運営がうまくいかず、組織の解散や減給も経験しました。その後は管理職ではない立場になりましたが、デジタルマーケティングの専門性を高め、成果を積み重ねたことで、現在は管理職だった頃と変わらない水準まで年収が戻っています。
この経験から感じたのは、年収を上げる方法は「役職を上げること」だけではないということです。
会社や市場から求められる専門性を身につけ、成果につなげ、簡単には代替できない仕事ができるようになる。そうやって「仕事の価値」を高めることでも、キャリアは前に進みます。
この記事では、管理職でうまくいかなかった経験や減給、その後に専門性を磨いて評価を取り戻した実体験をもとに、お伝えしていきます。
管理職になれば年収は上がるのか?
「年収を上げたいなら、まずは昇進を目指す」
会社員として働いていると、そう考える人は多いのではないでしょうか。役職が上がれば責任も増え、その分給与も上がる。確かに、会社の評価制度によっては管理職になることが年収アップへの分かりやすいルートです。
私自身も、現職でデジタルマーケティング課の課長を経験しました。
しかし、実際に管理職になってみて感じたのは、「役職が上がること」と「自分の価値が上がること」は必ずしも同じではないということでした。管理職になれば、これまで自分自身が成果を出せばよかったところから、チーム全体で成果を出すことが求められます。メンバーの育成や業務分担、チームの方向性を決めることも仕事になります。そして、どれだけ本人に能力があっても、組織の目的やチーム編成、メンバーとの相性によっては、思うように力を発揮できないこともあります。
私の場合もそうでした。
当時のチームは、デジタルマーケティングという名前ではありましたが、Web制作を得意とするメンバーが中心でした。一方で、会社が求めていたのは、集客から成約までを考え、数値を見ながらPDCAを回していくデジタルマーケティングでした。同じ「Web」に関わる仕事でも、制作とマーケティングでは求められる役割が違います。そのズレをうまく埋めることができず、
最終的にチームは解散。私自身も減給となりました。
管理職になったからといって、必ずキャリアが順調に進むわけではありません。むしろこの経験を通じて、私は初めて、「役職を上げることより、自分がどんな価値を提供できるのかを考える方が大切なのではないか」と思うようになりました。
そこから、私のキャリアの考え方は少しずつ変わっていきました。
減給から気づいた、役職ではなく成果で評価されるということ
チームが解散したあと、私は別の試験の担当になりました。
しかし、チームで持っていた業務を引き継ぎながら、新しい試験の業務も担当することになり、仕事はなかなか回りませんでした。毎日のように疲弊し、体調を崩すことも増えていきました。
最終的には、その試験の担当からも外れることになります。
キャリアとして考えれば、決して順調とは言えない時期でした。そんなときに拾ってくれたのが、今の上司です。そのときに言われた言葉を、今でも覚えています。
「結果を出して見返そうぜ!」
そこから、少しずつ状況が変わっていきました。もちろん、簡単だったわけではありません。厳しいことを言われることもありました。それでも上司は、私の強みを活かせる仕事や環境を用意してくれました。
その中で取り組んだ一つが、メールマーケティングでした。
ユーザー行動に基づいた配信シナリオ設計から施策を考え、数値を確認し、改善を繰り返す。その結果、成果につながり、少しずつ評価も戻っていきました。
そして最終的には、管理職だった頃と変わらない水準まで年収も戻りました。ここで私が感じたのは、役職がなくなったからといって、自分の価値までなくなるわけではないということです。自分の強みを活かせる場所で、会社が求めている成果を出すことができれば、評価はあとからついてくることがあります。
同時に、人には向き不向きがあります。
どれだけ努力しても、自分の強みと仕事内容が合っていなかったり、チームの環境が合っていなかったりすれば、本来の力を発揮できないこともあります。逆に、自分の強みを理解してくれる上司や、自分の能力を活かせる環境に出会うことで、大きく変わることもあります。
私はこの経験から、キャリアでは「どんな役職につくか」だけではなく、「自分の強みを、どこで、どのように使うか」も非常に大切だと考えるようになりました。
年収を上げたのは、役職ではなく専門性と希少性だった
では、管理職ではなくなった私が、なぜ以前と同じ水準まで年収を戻すことができたのでしょうか。
振り返ってみると、大きかったのは専門性と希少性だったと思います。
現在の職場では、デジタルマーケティングの施策を考え、実行し、数字を見ながら改善まで進められる人は多くありません。
特にWeb広告の知識だけではなく、集客から成約までを考えて戦略や施策を設計し、その結果を上層部に説明するところまで担える人となると、さらに限られます。
ここに、私は仕事の価値があるのだと思います。
仕事の価値は、需要と供給の関係に少し似ています。
たとえば、魚が大漁に獲れれば市場に多く出回るため、希少性は下がります。反対に、ほとんど獲れなければ希少性は高くなります。
仕事も同じではないでしょうか。
多くの人ができる仕事であれば、代わりを見つけやすい。一方で、会社が必要としているのに、できる人が少ない仕事は価値が高まりやすくなります。
私の会社は資格スクールなので、資格に関する専門知識を持つ社員は多くいます。しかし、デジタルマーケティングやWeb広告を理解し、事業の成果につなげられる社員は多くありません。
会社が必要としているものと、自分が持っている専門性。
この2つが重なったことで、私自身の仕事の価値も高まっていったのだと思います。だから私は、年収を上げるために「何の役職につくか」だけを見るのではなく、「自分の会社や市場では、どんな仕事が求められていて、それをできる人がどれだけいるのか」を考えることが大切だと思っています。
専門性は、ただ高めれば良いわけではありません。会社や顧客が必要としているものと重なって初めて、仕事としての価値になります。そして、その価値を成果として返すことができれば、役職がなくても評価される可能性は十分にあります。
私自身も、管理職という肩書きを失ってから、むしろこの考え方を強く意識するようになりました。役職を取りにいくのではなく、必要とされる仕事をできる人になる。
結果として、それが年収にもつながっていったのだと思います。
評価される目標より、市場価値が上がる目標を選ぶ
私は仕事の目標を立てるとき、あえて簡単には達成できないものを設定することがあります。
上司からはよく、「なんでそんなに達成しにくい目標にするんだ」と言われます(笑)。
確かに、評価だけを考えれば、もう少し達成しやすい目標を設定した方が良いのかもしれません。しかし、私が意識しているのは、「この会社で評価されるか」だけではなく、「この会社以外でも通用する力が身につくか」ということです。
簡単に達成できる目標だけを追いかけていれば、評価は安定するかもしれません。
一方で、自分の能力を少し超える目標に挑戦すれば、たとえ達成できなかったとしても、その過程で新しい知識や経験が身につきます。私自身、デジタルマーケティングの専門性を高めるために、上級ウェブ解析士や上級ウェブ広告マネージャーなどの資格取得にも取り組んできました。
資格を取ること自体が目的ではありません。
学んだ知識を実務で使い、成果につなげる。そして同時に、社内だけではなく、外部から見ても自分の専門性を説明できるようにする。その積み重ねが、結果として自分の市場価値を高めることにつながると考えています。
会社の評価制度は、その会社の中で決められたものです。しかし、キャリアは一つの会社だけで終わるとは限りません。だからこそ私は、「今の評価を少し上げるために何をするか」ではなく、「数年後にできることを増やすために何をするか」を大切にしています。
もちろん、会社から求められている仕事をおろそかにして良いという意味ではありません。
会社への貢献と、自分自身の成長。
この二つが重なるところを探していくことが重要だと思います。今の会社が求めていたのは、デジタルマーケティングを使って成果を出せる人材でした。そして私は、その分野を高めていきたいと思っている。たまたまではありますが、会社が求めるものと自分が伸ばしたいものが重なったことで、仕事を通じて専門性を高めることができました。
短期的な評価だけを追えば、遠回りに見えることもあります。
それでも、長いキャリアで考えれば、評価されやすい人になることより、必要とされる人になることの方が大切なのではないかと私は思っています。
目指したいのは、作業者ではなく全体を動かす人
これから私が目指したいのは、すべての実務を自分でこなせる人ではありません。
広告運用、Web制作、SEO、システム開発。それぞれの分野には、その道に特化した専門家がいます。その人たち以上の専門知識を、すべて自分で身につけることは現実的ではありません。
だからこそ私は、自分が作業者になるのではなく、全体を動かす人になりたいと考えています。
イメージとしては、操縦者です。実際に動いてくれるのは、それぞれの分野の専門家。
しかし、どこへ向かうのかを決め、状況を見ながら手綱を握るのは自分です。そのためには、「広告は代理店に任せているから分からない」「Webはエンジニアに任せているから分からない」ではNGです。
専門家以上に詳しくなる必要はありません。
ただし、提案された内容が会社の目的に合っているのか、施策同士がつながっているのか、本当に成果につながるのかを判断できるだけの知識は必要です。実際、広告代理店を見直した際にも、それを強く感じました。新しい代理店とのやり取りを通じて、これまで当たり前だと思っていた運用の中にも、見直すべき部分があることに気づきました。
もし自分に広告の知識がなければ、代理店から提案された内容をそのまま受け入れるしかなかったかもしれません。専門知識は、自分ですべてを実行するためだけに必要なのではありません。
専門家の力を正しく借りるためにも必要なのです。
そして、私が今後さらに身につけたいのが、その一段上にあるマーケティング戦略を考える力です。Web広告をどう運用するかではなく、
「誰に、どんな価値を届けるのか」
「そのために、どの媒体を使うのか」
「集客から成約までをどう設計するのか」
といった全体像を考えることが重要です。
将来的には、社内だけではなく、企業に対してマーケティングやWeb活用の提案ができるような仕事にも興味があります。今の会社で役職を上げることよりも、会社が変わっても、相手が変わっても、「この人に相談すれば、全体を整理して前に進めてくれる」と思ってもらえる人になる。
それが、今の私が目指しているキャリアです。
役職は会社から与えられるものですが、専門性や判断力、全体を動かす力は、自分自身に残ります。これからも私は、肩書きを増やすことより、自分が握れる手綱を増やしていきたいと思っています。
優れた外注を使うには、発注側にも設計力が必要
外部ベンダーとの付き合い方は、旅行に少し似ていると思っています。
たとえば、「明日の20時までに北海道の札幌市へ行く」という目的があったとします。移動手段には、飛行機、新幹線、バス、自動車など、いくつもの選択肢があります。
その中で、優れたベンダーが「飛行機」だとします。飛行機を使えば、自分で車を運転するよりも速く、効率よく北海道まで移動できます。だからといって、「飛行機に任せたので、あとは分かりません」では目的地にはたどり着けません。何時発の便を使うのか。何時までに羽田空港へ行くのか。どこから搭乗するのか。北海道に着いたあと、どう札幌市まで移動するのか。少なくとも、こうした全体の流れは自分たちで理解し、設計しておく必要があります。
外部ベンダーも同じです。
専門的な実務を任せることはできます。しかし、何を実現したくて、そのためになぜその手段を選び、最終的にどんな成果を求めるのかまで丸投げしてはいけないと思っています。
たとえば広告代理店に広告運用をお願いする場合でも、「広告は分からないので全部お願いします」ではなく、自社として何を達成したいのか、どの数字を見て判断するのか、提案された施策が目的に合っているのかを確認できる知識は必要です。
専門家以上に詳しくなる必要はありません。
しかし、専門家の提案を理解し、良し悪しを判断できなければ、会社のお金をどこに使っているのかも分からなくなってしまいます。だからこそ私は、外注するほど発注側にも一定の知識と設計力が必要だと考えています。優れた専門家の力を借りながらも、目的地を決め、進む方向を判断し、手綱を握るのは自分たちです。
すべてを自分でやる必要はない。でも、どこへ向かっているかは自分で分かっていなければならない。
それが、外部ベンダーを使う側に必要な役割だと思っています。
役職ではなく、企業に価値を提供できる人になりたい
これからのキャリアを考えたとき、私には「今の会社でどこまで役職を上げるか」ということへの関心はあまりありません。それよりも、会社が変わっても、業界が変わっても必要とされる力を身につけたいと考えています。
その中で、今後さらに高めたいのがマーケティング戦略を設計する力です。これまではWeb広告やメールマーケティング、SEO、Webサイト改善など、デジタルマーケティングを中心に経験を積んできました。しかし、それらはあくまで手段です。
本来考えるべきなのは、
「誰に価値を届けるのか」
「どんな課題を解決するのか」
「そのために、どの施策を組み合わせるのか」
という、さらに上流の部分だと思っています。広告を改善することが目的なのではありません。SEOで順位を上げることが目的でもありません。最終的には、企業の売上を伸ばしたり、無駄なコストを減らしたり、事業そのものを前に進めることが目的です。
だからこそ私は、デジタルマーケティングという専門性を土台にしながら、もっと広い視点で事業を考えられるようになりたいと思っています。
将来的には、企業に対してWebやマーケティングのコンサルティングができるような仕事にも興味があります。すでに外部とのつながりを作るために交流会へ参加したり、案件獲得に向けて動いてみたりもしました。もちろん、すぐに仕事につながるほど簡単ではありません。
それでも、今の会社だけを見てキャリアを考えるのではなく、少しずつ外の世界にも目を向けていきたいと思っています。目指しているのは、特定の会社の中でだけ評価される人ではありません。
「この会社の課題を整理して、何をすべきか一緒に考えてほしい」
そう言ってもらえるような人です。役職がなくても、誰かに必要とされる。会社の看板が変わっても、自分の知識や経験で価値を提供できる。そんな働き方ができるようになれば、キャリアの選択肢はもっと広がっていくと思います。
管理職になることも、一つのキャリアです。しかし、それだけがキャリアアップではありません。
私はこれからも、肩書きを追いかけるのではなく、「何ができる人なのか」を増やしながら、自分自身の仕事の価値を高めていきたいと思っています。
まとめ|管理職になることだけがキャリアアップではない
以前の私は、年収を上げるためには管理職になることが、一つの分かりやすいキャリアアップだと思っていました。実際に管理職も経験しました。
しかし、チーム運営がうまくいかず、組織の解散や減給も経験しました。
その後、管理職ではない立場になってから、デジタルマーケティングの専門性を高め、成果を積み重ねたことで、結果として管理職だった頃と変わらない水準まで年収を戻すことができました。この経験から感じているのは、キャリアアップは役職だけでは決まらないということです。
管理職としてチームを率いる道もあります。一つの分野を深く追求し、スペシャリストとして価値を高める道もあります。専門性を持ちながら、外部のプロフェッショナルを束ね、全体を動かしていく道もあります。どれが正解というわけではありません。
大切なのは、「自分はどんな形なら、会社や顧客に価値を提供できるのか」を考えることだと思います。
そして、年収を高めたいのであれば、役職だけを見るのではなく、会社や市場が何を求めているのかを知り、そこで必要とされる力を身につけていくことも一つの方法です。
私自身、まだキャリアの途中です。これからマーケティング戦略を学び、さらにできることを増やしていきたいと思っています。数年後には、今とはまた違う考え方になっているかもしれません。それでも、これからも大切にしたい考え方があります。
役職ではなく、自分が提供できる仕事の価値を高めていくこと。
会社の肩書きが変わっても、自分が身につけた知識や経験は残ります。「管理職にならないと、この先年収は上がらないのだろうか」もし、そんな不安を感じている人がいるなら、管理職になることだけをキャリアのゴールにしなくても良いのではないでしょうか。自分の強みを知り、必要とされる専門性を身につけ、自分に合った形で価値を提供していく。その先にも、キャリアアップの道はあると私は思っています。

