GA4でデータ分析をするとき、探索レポートを作成したり、ディメンションや指標を設定したりと、知りたい数字を確認するまでに手間がかかることがあります。
そんな分析業務を大きく変える可能性があるのが、Google Analytics4に搭載された「Ask Advisor」です。自然な言葉で質問しながらデータを確認できるため、データ抽出の時間を短縮し、PDCAをより速く回せる可能性があります。
一方で、Ask Advisorがあれば誰でも正しくデータ分析できるのでしょうか。
私は、むしろAIが分析を支援してくれる時代だからこそ、「何を見るのか」「数字をどう解釈するのか」「AIの回答は正しいのか」を判断する力が重要になると考えています。
この記事では、Ask Advisorでできることを紹介しながら、AI時代に求められるデータ分析力について実務経験をもとに考えていきます。
※Ask Advisorは2026年9月時点ではベータ版です。今後のアップデートにより、機能や仕様、利用条件などが変更される可能性があります。
GA4のAsk Advisorとは?
Ask Advisorは、Google Analytics 4(GA4)に搭載された、AIを活用してデータ分析を支援する機能です。
これまでGA4で特定の数値を確認する場合、レポートを開いたり、探索レポートを作成したり、ディメンションや指標を設定したりする必要がありました。
Ask Advisorでは、こうしたデータの確認を自然な言葉で質問できます。

たとえば、
- 「先月と比較してユーザー数はどう変化した?」
- 「売上が減少した要因は?」
- 「特定のページへの流入状況を確認したい」
といったように、チャットで質問する感覚でGA4のデータを確認・分析できます。
これまで「どのレポートを見ればいいのか」「どのディメンションと指標を組み合わせればいいのか」を考えながら操作していた作業の一部を、AIとの会話によって進められるようになるわけです。
私が特に魅力を感じているのは、単に操作が簡単になることだけではありません。
データを取り出すまでの時間が短くなれば、その分「なぜこの数字になったのか」「次に何を改善するべきか」を考える時間に使えます。
これまで30分かけてデータを抽出していたものが短時間で確認できるようになれば、仮説を立て、データを確認し、さらに深掘りするという分析のサイクルも速くなります。
つまりAsk Advisorは、GA4のデータ分析そのものを代替するというより、データ分析をより速く進めるための強力なサポートツールだと私は考えています。
一方で、ここで重要なのが「自然な言葉で質問できる=誰でも正しくデータ分析できる」というわけではないことです。
Ask Advisorを本当に活用するためには、GA4の仕組みや数字の意味を理解していることが重要になります。
Ask Advisorでデータ分析はどう変わる?
Ask Advisorによって大きく変わるのは、データ分析そのものというよりも、分析に必要なデータを確認するまでのスピードだと考えています。
私が普段データ分析をするときは、まず申込件数を前年比で比較し、前年を下回っている箇所がないかを確認します。
そこで問題が見つかった場合は、
- 申込に直結するページのアクセス数
- そのページへの流入元
- 次にどのページへ遷移しているのか
- 参照元やメディア
- 広告経由の数値
- 自然検索からの流入状況
などを順番に確認していきます。
GA4だけで完結するとは限らず、必要に応じて広告管理画面やSearch Consoleまで確認しながら、どこに問題があるのかを深掘りしていきます。
ただ、これまでは一つひとつの数値を確認するために、レポートを切り替えたり、探索レポートを作成したり、条件を絞り込んだりする必要がありました。
Ask Advisorを活用できれば、
「前年と比較してこのページのセッション数はどう変化した?」
「このページへの流入元を教えて」
「自然検索からの流入だけに絞って比較して」
といった質問をしながら、必要なデータを素早く確認できるようになります。

これは、データ分析をする人にとってかなり大きな変化です。
なぜなら、これまで「データを取り出すこと」に使っていた時間を、「なぜこの数字になったのか」「次に何を確認するべきか」という思考に使えるようになるからです。
一つの仮説を確認して、違えば次の仮説を調べる。
このサイクルを短時間で繰り返せるようになれば、分析から改善施策までのPDCAもこれまで以上に速く回せるようになります。
ただし、ここで一つ疑問が出てきます。
これだけ簡単にデータを確認できるようになるのであれば、これからはGA4の知識やデータ分析スキルを身につける必要はなくなるのでしょうか。
私は、むしろ逆だと考えています。
それでもデータ分析スキルは不要にならない
Ask Advisorによって、必要なデータをこれまでより簡単に確認できるようになります。
しかし、私はこれによってデータ分析スキルが不要になるとは考えていません。
むしろ、AIが数字を簡単に出してくれる時代だからこそ、その数字が何を意味しているのかを理解する力がこれまで以上に重要になると思っています。
たとえばAsk Advisorに、
「このページのセッション数を教えて」
と質問すれば、数値自体はすぐに確認できるかもしれません。
しかし、「セッションとは何を意味するのか」「ユーザー数とはどう違うのか」「エンゲージメント率は何を表しているのか」といったGA4の基本的な指標を理解していなければ、出てきた結果を正しく判断することはできません。
これはディメンションについても同じです。
ページ、参照元、メディア、ランディングページなど、それぞれが何を意味しているのかを理解しているからこそ、
「次はこの切り口で見てみよう」
という次の質問が生まれます。

つまり、Ask Advisorが代わりにやってくれるのは「考えること」ではなく、必要なデータにたどり着くまでの作業を短縮することだと私は考えています。
特に重要なのが、「何のためにデータを見るのか」を最初に決めることです。
申込件数を増やしたいのか。
資料請求を増やしたいのか。
特定のページから次のページへの遷移を改善したいのか。
目的が違えば、見るべき数字も変わります。目的が明確になっていれば、
「このKPIにつながるページを確認しよう」
「次は流入元を見よう」
「広告経由と自然検索経由を比較してみよう」
と、分析の方向性を決めることができます。
反対に、目的が曖昧なまま「何か問題がないか調べて」とAIに任せても、出てきた情報の中から何が本当に重要なのか判断するのは難しいでしょう。
Ask Advisorによって、GA4を操作するハードルは下がっていくかもしれません。
しかし、GA4を理解する必要がなくなるわけではありません。
むしろ、GA4の仕組みや指標を理解し、見るべき数字を判断できる人ほど、Ask Advisorを強力な武器として使えるようになるのではないかと思います。
AIの回答を鵜呑みにすると危険な理由
Ask Advisorを使えば、これまで時間がかかっていたデータ確認を短時間で進められるようになります。しかし、AIが出してきた数字や分析結果を、そのまま「原因」だと判断してしまうのは危険です。
たとえば、「Aページのセッション数が前年より減っている」というデータが出てきたとします。
これだけを見ると、「Aページのアクセスが減ったから、A講座の申込数も減ったのではないか」と考えたくなるかもしれません。
しかし、実際にはそれだけでは原因を判断できません。確認すべきことは、まだたくさんあります。
- Aページへの流入元は変わっていないか
- 参照元やメディアごとの流入数はどうか
- エンゲージメント率は前年と比べてどうか
- スクロール率は落ちていないか
- 次のページへの遷移率はどう変化したか
- ページ構成やCTAの位置を変更していないか
このように、一つの数字だけで結論を出すのではなく、複数の視点から確認していく必要があります。

特に注意したいのが、相関関係と因果関係を混同しないことです。
「Aページのセッション数が減った」と「申込数が減った」が同時に起きていたとしても、必ずしもAページのセッション減少が申込低下の原因とは限りません。
別のページからの流入が減っているかもしれませんし、広告の配信量が変わった可能性もあります。もしかすると、サイトの導線変更によって申込ページへ進みにくくなっているだけかもしれません。AIは、データの中から変化や特徴を見つけることには非常に強い存在です。
しかし、その変化が「なぜ起きたのか」を判断するときには、分析する側が問いを重ねながら検証していく必要があります。
だからこそAsk Advisorを使うときに重要なのは、
AIに答えを出してもらうことではなく、AIとの対話を使って仮説を深掘りすること
だと私は考えています。
一つの回答を見て終わるのではなく、
「では流入元は?」
「前年との違いは?」
「特定のチャネルだけに変化はないか?」
と質問を重ねていく。この使い方ができる人ほど、Ask Advisorをデータ分析の強力な武器として活用できるのではないでしょうか。
GA4だけでは「なぜ?」が分からないこともある
データ分析をしていると、数字の変化までは把握できても、その原因まではGA4だけでは分からないことがあります。
たとえば、前年と比べてあるページから申込ページへの遷移率が大きく落ちていたとします。
GA4を見れば、
「どのページの遷移率が落ちているのか」
「どの流入元で変化が大きいのか」
といった事実は確認できます。
しかし、もし前年からサイトのページ構成を大きく変更していた場合、その変更内容までGA4が自動的に理解しているわけではありません。
実際には、
- CTAの位置を変更した
- ボタンの文言を変えた
- ページ内の情報量が増えた
- 申込までの導線を変更した
- ページデザインを大きく変えた
といったことが原因で、ユーザーが次に進みにくくなっている可能性もあります。GA4を見るだけでは「遷移率が落ちた」という事実までは分かっても、
「なぜ遷移率が落ちたのか」
までは判断できません。
サイトの変更履歴や広告施策、キャンペーン内容、商品の変更、現場で起きていることなど、データの外にある情報と照らし合わせる必要があります。
これはAsk Advisorを使う場合でも同じです。
AIがどれだけ高度になっても、分析に使える情報の範囲が限られていれば、その範囲の中でしか答えを導くことはできません。
だからこそ、データ分析では「数字を見る力」だけでなく、
ビジネスの状況や現場で起きていることを理解し、データと結びつける力
が重要になります。
AIは、変化を見つけたり、確認すべきポイントを整理したりするうえでは非常に強力です。
しかし、その数字の背景にある出来事まで含めて判断するには、最終的に人間の理解と経験が必要になります。
私は、AI時代のデータ分析では、こうした「データの中」と「現実の出来事」をつなぐ力が、これまで以上に重要になっていくと考えています。
AI時代のデータ分析で重要になる5つの力
Ask AdvisorのようなAIがデータ分析を支援してくれるようになると、「GA4を操作できること」だけでは差がつきにくくなっていくと思います。
その一方で、AIを正しく活用するためには、これまで以上に重要になる力があります。
1.分析する目的を決める力
まず重要なのは、「何のためにデータを見るのか」を明確にすることです。
申込件数を増やしたいのか、資料請求を増やしたいのか、特定のページからの遷移率を改善したいのか。目的によって、見るべき数字は変わります。
目的が決まっていなければ、Ask Advisorに質問できたとしても、出てきた数値の中から何が重要なのか判断できません。
データ分析は、数字を見ることが目的ではなく、課題を見つけて改善につなげるために行うものだと私は考えています。
2.GA4のデータを理解する力
AIが数字を出してくれたとしても、その数字の意味を理解できなければ正しい判断はできません。
セッション、ユーザー、エンゲージメント率、参照元、メディア、ランディングページなど、GA4にはさまざまな指標やディメンションがあります。
すべてを暗記する必要はないと思いますが、自分が分析する目的に関係する指標が「何を表しているのか」は理解しておく必要があります。
3.問いを立てる力
Ask Advisorでは、自然な言葉でデータについて質問できます。
だからこそ重要になるのが、何を質問するのかです。
たとえば「申込が減った理由を教えて」と聞いて終わるのではなく、
「どのページへの流入が減っている?」
「どの参照元・メディアで変化が大きい?」
「前年と比べて遷移率が落ちているページは?」
と問いを重ねていくことで、原因に近づいていくことができます。
AIへの質問力とは、特別なプロンプトを書く能力というより、課題を分解して次に確認すべきことを考える力に近いのではないかと思います。
4.AIの回答を検証する力
AIが出してきた回答を、そのまま正解だと思わないことも重要です。
一つの数字だけで判断せず、別の指標や流入元、前年の状況など複数の視点から確認する。
さらに必要であれば、広告管理画面やSearch Console、サイトの変更履歴などGA4以外の情報とも照らし合わせる。
AIは分析を高速化してくれますが、その分析結果が本当に正しいのかを判断する役割は人間側に残ると考えています。
5.データを意思決定につなげる力
そして最後に重要なのが、分析結果を「次の行動」につなげることです。
「このページの遷移率が落ちている」
という事実が分かっただけでは、改善にはなりません。CTAを変更するのか、ページ構成を見直すのか、広告の配信先を調整するのか。データをもとに仮説を立て、施策を実行し、その結果をもう一度データで確認する。ここまでつながって初めて、データ分析がビジネスの成果につながります。
Ask Advisorによって、データを取り出す作業はこれまで以上に簡単になっていくかもしれません。しかし、その先にある
「何を見るのか」
「なぜそうなったのか」
「では次に何をするのか」
を考える力は、むしろこれまで以上に重要になるのではないでしょうか。
Ask AdvisorはGA4を理解している人にとって「鬼に金棒」
Ask Advisorは、GA4を理解している人にとって非常に強力な武器になると思います。
必要な数字を短時間で確認できれば、これまでデータ抽出に使っていた時間を、仮説を立てたり、原因を深掘りしたり、改善施策を考えたりする時間に使えるからです。
一方で、GA4の基本的な仕組みや指標を理解しないまま使う場合は、少し注意が必要です。
私はAsk Advisorの話を考えているとき、「ヘリコプターの操縦」に近いのではないかと思いました。
ヘリコプターの免許がある人であれば、目的地まで短時間で移動できる非常に便利な乗り物です。
しかし、免許を持たず操縦方法を知らない人がいきなり乗ったら、便利な乗り物どころか、大きな事故になります。
Ask Advisorも同じではないでしょうか。
GA4を理解している人であれば、
「前年と比較してこのページのセッション数を確認しよう」
「次は流入元別に見てみよう」
「広告経由だけに絞ったらどうなる?」
「では遷移率は?」
と、AIとの会話を重ねながら高速で分析を進められます。
つまり、これまで身につけてきたGA4の知識やデータ分析の経験がある人にとって、Ask Advisorはまさに「鬼に金棒」です。
しかし、GA4の指標やデータ構造を理解していなければ、AIが出してきた回答が正しいのか、自分が知りたいことに本当に答えているのかを判断することが難しくなります。
便利になったからこそ、誤った解釈のまま意思決定まで進んでしまうスピードも速くなる可能性があります。
だから私は、Ask AdvisorによってGA4を学ぶ必要がなくなるのではなく、
GA4を理解している人が、これまで以上に速くデータ分析できる時代になる
と考えています。
AIによって「操作する時間」は短くなる。その分、人間は「考えること」に時間を使えるようになる。Ask Advisorの本当の価値は、そこにあるのではないでしょうか。
AIで分析する前に「正しいデータ」が計測されていることも重要
ここまでAsk Advisorを使いこなすためには、GA4の理解や問いを立てる力が重要だとお伝えしてきました。
しかし、その前提としてもう一つ忘れてはいけないことがあります。
それが、そもそも分析に必要なデータが正しく計測されているかということです。
Ask Advisorがどれだけ高度な分析をしてくれたとしても、GA4に必要なデータが入っていなければ、その情報をもとに分析することはできません。
たとえば、Webサイト上で重要なユーザー行動として、
- 資料請求
- 問い合わせ
- 申込フォームへの到達
- 講座の申込
- 特定のCTAのクリック
などがあるとします。
もし本来重要な行動が計測されていなかったり、逆にビジネス上それほど重要ではない行動を主要な成果として扱っていたりすれば、分析の前提そのものが変わってしまいます。
これはAsk Advisorだけの問題ではありません。
Google広告をはじめとしたWeb広告でも、AIによる自動入札や最適化が進んでいるからこそ、「何を成果としてAIに学習させるのか」が非常に重要になっています。
つまり、AIの性能が高くなればなるほど、
「どんなデータを取得するのか」
「何をコンバージョンとするのか」
「そのデータは本当に正しく計測できているのか」
という人間側の設計が、より重要になると考えています。Ask Advisorによって分析するスピードは大きく変わるかもしれません。しかし、正しい分析をするためには、その土台となるデータが正しく計測されている必要があります。
この「コンバージョン計測設計」については、AIを活用したWeb広告とも深く関係するテーマなので、別の記事で詳しく解説したいと思います。
まとめ|AI時代だからこそ、データ分析力が重要になる
GA4のAsk Advisorによって、これまで時間がかかっていたデータ抽出や確認作業は、これから大きく変わっていく可能性があります。
自然な言葉で質問しながら必要なデータを確認できれば、分析のスピードは上がり、改善のPDCAもこれまで以上に速く回せるようになるでしょう。
しかし、Ask Advisorがあるからといって、データ分析の知識が不要になるわけではありません。
むしろ重要になるのは、
- 何のために分析するのかを決める
- GA4の指標やデータの意味を理解する
- AIに適切な問いを投げる
- 出てきた回答を多角的に検証する
- データを改善施策や意思決定につなげる
といった、人間側の「考える力」です。
さらに、その分析の土台となるデータが正しく計測されていることも欠かせません。
AIは、私たちの代わりにすべてを考えてくれる存在ではなく、これまで時間がかかっていた作業を短縮し、分析や意思決定を加速させてくれる存在だと私は考えています。
GA4を理解している人にとって、Ask Advisorはまさに「鬼に金棒」です。
AIによってデータ分析が不要になるのではなく、データを取り出す力から、データを正しく読み、問いを立て、意思決定する力へ。
これからのデータ分析に求められる能力は、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。


