ChatGPTをはじめとした生成AIの普及によって、私たちの「調べ方」は大きく変わり始めています。
これまでは、Googleで検索し、複数のWebサイトを見比べながら情報を集めるのが一般的でした。しかし最近では、生成AIに質問し、ある程度情報を整理したうえで、必要なサイトだけを見るという人も増えているのではないでしょうか。
実際、私がWebマーケティングに携わる中でも、サイトへのセッションが前年より30%以上減少している部署があります。一方で、実際の売上は前年を上回っているケースもあります。
もちろん、これだけで「生成AIが原因」と断定することはできません。
ただ、ユーザーがWebサイトを訪れる前の情報収集や比較検討の方法そのものが変わり、ある程度候補を絞った状態でサイトへ訪れるようになっている可能性は感じています。
さらにWeb広告の世界でも、Google広告のP-MAXをはじめ、AIによる自動最適化が急速に進んでいます。そしてついに、ChatGPTにも広告が登場しました。
では、AIがユーザーの意図を理解し、広告配信まで最適化する時代に、Web広告はこれからどう変わっていくのでしょうか。
私は、これから重要になるのは細かな広告運用テクニックだけではなく、これまで以上に「誰に届けるのか」を深く理解することだと考えています。
この記事では、ChatGPT広告の仕組みを簡単に紹介しながら、AI時代のWeb広告に必要になるペルソナ設計、顧客インサイト、顧客データの活用について、Webマーケティングの現場で感じている変化をもとに考えていきます。
ChatGPT広告とは?仕組みを簡単に解説
ChatGPT広告とは、ChatGPTの回答画面に表示される広告です。日本では2026年8月11日から提供が開始され、ユーザーが情報を探したり、商品・サービスを比較したり、意思決定をしたりする会話の中で広告を届けられるようになりました。
現在、広告はChatGPTの回答とは分離された形で表示され、広告主名や見出し、説明文、画像、ランディングページなどで構成されています。また、広告がChatGPTの回答内容そのものに影響することはありません。
私が特に注目しているのは、広告を表示する際の考え方です。
従来の検索広告では、ユーザーが入力した検索キーワードが広告配信を考えるうえで重要な要素でした。
一方、ChatGPT広告では、単純なキーワードだけではなく、
- 現在の会話の文脈や意図
- 広告のランディングページ
- 広告のタイトルや説明文
- 広告主が提供するコンテキスト情報
など、複数の情報をもとに広告との関連性が判断されます。
例えば、
「注文住宅」
と検索する人と、
「子どもが生まれたので埼玉県で戸建てを検討している。都内へ通勤しやすく、住宅ローンも無理のない範囲にしたい」
と相談する人では、後者の方が「何を求めているのか」がより具体的です。
生成AIとの会話では、このようなユーザーの背景や目的が言葉として表れやすくなります。
OpenAIも、ChatGPT広告では従来のキーワード中心の広告とは異なる考え方が必要であり、ユーザーが「何をしようとしているのか」に対して役立つ広告を作ることが重要だと説明しています。
つまりChatGPT広告の登場は、単に新しい広告枠が増えたというだけではありません。
「どのキーワードを狙うか」から、「どんな目的を持ったユーザーに、どんな価値を届けるか」へ。
Web広告そのものの考え方が変わり始めているように感じます。
AI時代のWeb広告はどう変わる?
ChatGPT広告だけでなく、Google広告でもAIを活用した自動化は急速に進んでいます。
その代表例が、P-MAX(Performance Max)キャンペーンです。
P-MAXでは、広告主が目標や予算、広告見出し、説明文、画像、動画などを用意すると、Google AIが入札、予算配分、オーディエンス、クリエイティブ、アトリビューションなどを活用しながら成果の最大化を目指します。
私自身、P-MAXを運用する中で、この変化を強く感じています。
これまでは「どこに広告を出すか」「いくらで入札するか」「どの広告を優先するか」といった細かな調整も、広告運用者の重要な仕事でした。
しかしP-MAXでは、複数の広告見出しや説明文、バナー、動画などを用意すると、それらを組み合わせながらAIが最適化していきます。Google広告でも、アセットは掲載されるチャネルやユーザーに応じて自動的に組み合わされる仕組みになっています。
実際、私が携わる広告運用でも、P-MAX経由の売上が大きくなってきており、AIによる広告最適化の存在感は以前より増していると感じています。
では、広告運用者の仕事はAIによってなくなってしまうのでしょうか。
私は、むしろ逆だと考えています。
AIに入札や配信の最適化を任せられるようになるからこそ、人間は、
「誰に届けるのか」
「その人は何に悩んでいるのか」
「何を目的として商品やサービスを探しているのか」
「どんなメッセージなら心が動くのか」
といった、より上流の部分に時間を使う必要があります。
つまりWeb広告は、人間が細かく広告を“操作する”仕事から、AIが成果を出しやすい環境を“設計する”仕事へ変わり始めているのではないでしょうか。
そして、その設計でこれから一層重要になるのが、「顧客をどこまで深く理解できているか」だと私は考えています。
AI時代ほど「顧客理解」と「顧客データ」が重要になる
AIによって広告配信の自動化が進むほど、私は逆に「顧客をどれだけ深く理解できているか」が重要になると考えています。
なぜなら、AIがどれだけ高性能になっても、広告主側が「誰に、どんな価値を届けたいのか」を理解できていなければ、AIに渡せる情報の質も高くならないからです。
例えば、住宅メーカーが広告のターゲットとなる人物を考えるとします。
Aは、「30代・男性・大卒・会社員」という人物像。
一方、Bは、「33歳・男性・大卒・大手企業勤務・年収600万円・妻子あり・埼玉県在住」という人物像です。
当然、Bの方がその人の生活や悩みを想像しやすくなります。
「子どもが成長する前に家を買いたいのではないか」
「都内への通勤時間も気にしているかもしれない」
「住宅ローンを無理なく返せるか不安なのではないか」
と、商品を探している背景や心理まで考えられるようになります。
重要なのは、このような細かな属性をそのまま広告の設定画面に入力することではありません。
顧客像の解像度を高めることで、その人に響く広告コピーやクリエイティブ、ランディングページ、訴求内容を考えやすくなることです。
さらに、実際に成果につながったユーザーのデータを蓄積していくことも重要になります。
どのようなユーザーが問い合わせをしたのか。
どのようなユーザーが購入したのか。
その中でも、売上や利益につながった顧客にはどのような特徴があったのか。
こうした自社データを整理し、広告運用に活用できれば、AIもより「成果につながるユーザー」を学習しやすくなります。
つまり、これからのWeb広告では、
1、ペルソナ設計で顧客像を明確にする。
2、顧客インサイトから、その人が求めている価値を考える。
3、実際の顧客データから、本当に成果につながる人を理解する。
この3つをつなげることが、これまで以上に重要になるのではないでしょうか。
AIに任せる領域が増えるからこそ、人間は顧客を見る。
私は、それがAI時代のWeb広告で求められる考え方だと思っています。
Web広告運用者の仕事は「操作」から「設計」へ
AIによる自動化が進むと、「これから広告運用者の仕事はなくなるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、私は広告運用者の仕事がなくなるのではなく、求められる役割が変わっていくと考えています。
これまでは、入札単価を調整したり、配信先を細かく設定したり、広告ごとの成果を確認しながら運用したりと、広告管理画面を「操作する力」が重要でした。
もちろん、これからも広告の仕組みを理解することは必要です。
ただ、AIが入札や配信、クリエイティブの組み合わせなどを最適化してくれるようになれば、人間が細かな調整だけに多くの時間を使う必要は少なくなっていくでしょう。
その代わりに重要になるのが、AIに何を任せ、何を人間が考えるのかを設計することです。
例えば、
「この商品は誰の、どんな悩みを解決するのか」
「ユーザーはなぜこの商品を選ぶのか」
「購入を迷っている理由は何なのか」
「どんな言葉や体験なら、その人の心を動かせるのか」
こうした答えは、広告管理画面を眺めているだけでは見つかりません。
顧客の声を聞き、データを分析し、商品やサービスを理解しながら、その人の深層心理まで考える必要があります。
そして、それを広告コピーやクリエイティブ、ランディングページ、コンテンツ、顧客とのコミュニケーションへ落とし込んでいく。
私は、これからのWeb広告運用者には、顧客の深層心理を理解し、それを言語化し、どのようにすれば感動を与えられるかまで含めて顧客体験を設計する力が求められると考えています。
つまり、広告運用者の仕事は、
「広告をどう操作するか」から、「顧客にどんな価値を届けるかをどう設計するか」へ。
AIが進化するほど、人間にしかできない顧客理解や戦略設計の価値は、むしろ高まっていくのではないでしょうか。
まとめ|AI時代だからこそ、最後に重要なのは顧客理解
ChatGPT広告の登場やGoogle広告のAI化によって、Web広告を取り巻く環境は大きく変わり始めています。
これまでのように、検索キーワードを細かく選び、入札や配信を人間が細かく調整するだけではなく、AIがユーザーの意図や文脈を理解し、より適切な広告配信を行う時代になってきました。
だからといって、Web広告そのものがなくなるわけではないと私は考えています。
変わるのは、広告の「出し方」と、広告運用者に求められる役割です。
これから重要になるのは、
誰に届けたいのか。
その人は何に悩んでいるのか。
何を求めているのか。
どんな価値を届ければ心が動くのか。
こうした顧客理解を深め、それをペルソナ設計や顧客インサイト、クリエイティブ、ランディングページ、そして自社に蓄積された顧客データへつなげていくことです。
AIは、与えられた情報やデータをもとに、膨大な選択肢の中から最適化することを得意としています。
だからこそ人間は、AIに任せることだけを考えるのではなく、AIに何を渡すのか、その前段階を考える必要があるのだと思います。
広告管理画面を操作する力から、顧客を理解し、価値を言語化し、顧客体験を設計する力へ。
AI時代のWeb広告では、テクノロジーが進化するほど、最後に問われるのは「顧客をどれだけ見ているか」なのではないでしょうか。

